Zooシリーズはインド旅行で動物園を訪れ、動物のいない空っぽの展示が目立ち、面白かったのがきっかっけです。その後広報誌の口絵ページの仕事で国内の動物園取材を何本かやる機会があり、動物園に関心を持った。

最初は35ミリカメラで、後に6x7 モノクロで半年、30 動物園ぐらい撮影したが、晴れた青空のあっけらかんとした感じがでるのと、主観的な表現にしないためにもカラー良いと考え、97 年からネガカラーで取り直し個展寸前まで撮影した。

  展示  Cプリント半切 40点

 

 ・・・・解説に変えて・・・・・・・・

ジョン・バージャー著 「見ると云うこと」[なぜ動物を観るのか?] より抜粋

 

動物を展覧するために劇場的なディスプレイを施 した動物園は際に動 物がいかに周縁へと追いやられたかを如実に語っている。・・・(数行略)・・・ 社会から周縁化を強いるような施設や場所はみな ・・・ゲットーや貧民街 、刑務所、昔の精神病院強制収容所など・・・ 動物園となにがしの共通 がある。 しかし動物園を単なるシンボルとして使うのはあ まりにも安易で回避的な 感を免れ得ない。 動物園は人間と動物の関係を示す場所であり、それ以外の何物でもない。      

           笠原美智子訳飯沢耕太郎監修 白水社刊


 

 

 

98年度、ニコンサロンでの全写真展のなかで最優秀として、

伊奈信男賞を受賞 

     

受賞対象となった6月の展示と同じものを再展示

 

 

授賞理由文( 抜粋)

 

日ごろ見慣れた動物園の 檻の光景を、まるで演劇 の舞台装置のように思わせてくる作品である。 この私たちの「見たい」という欲望の装置を見つめ、展示装置としての動 物園に、この時代の危機・・パラドックスを洞察した。 95[スペクトログラム]で新しい素材のビルに照り返された光が隣接する 古い建物をライトアップする現象を精緻にとらえドラマチックな表現に結実させた作者は、新作「 ZOO 」においても同じ手 法を一層充実させた。自分の写真法を揺るぎな持続する態度、ケレン味ない剛直ともいえる写真表現、そしてそのような 写真表現自体がもつ批評 性に感銘を受けた。